INTERVIEW
自己紹介の文章を書こうとペンを取りましたが、自分たちのことを話すのってとっても難しい…。日頃から親交のある3KGの佐々木信さんにインタビューとしてまとめてもらいました。
そして私たちは2人で三木佐藤アーキです。一緒に話すと片方に引っ張られそうなので、一人ずつお話しています。私たちの興味関心や、仕事のスタイルについてお話していますが、相談していなくても意見が合っていたり、微妙なズレもあったり……。設計の依頼を迷っている方は、もしかしたら判断材料になるかもしれません。ぜひ読んでみてください。
三木 万裕子 - INTERVIEW
佐藤 圭 - INTERVIEW
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三木 万裕子 - INTERVIEW
取材日:2023年5月19日
「普段何してる時が幸せ?」その問いから家づくりがスタートします。
ーどんなことを考えて建築してますか?
みんなが想像できない細部まで仕上げることです。悩んだり、「どうしたらいいのだろう?」と頭を抱えているところから、ワクワクする要素や「楽しさ」を盛り込みたいなと常に考えています。
ー設計を依頼する時に、建築について深く知っていなくても大丈夫ですか?
そうですね、でも最近は知識が豊富な方が増えてきていて、とても細かいところまで心配してる方が多い印象です。時代ですかね。そこまで考えなくてもよいのになと思います。
ー今の時代、本やWeb、youtubeなどで色々調べられますよね。特に建築家に依頼する場合、依頼する側も勉強しておかないと……と考える人は多い気がします。依頼する際は何を持っていけばいいでしょうか。
勉強してくることは大切だと思います。ですが自分で答えを見つけるまではしなくてもよいです。自分の中で、「これが正しい」とか「これは間違いない」と確信を持って来る方が多いのですが、誰でも調べられるようなネット上の情報は根拠の薄いものがほとんどで、余計混乱してしまうことがあります。勉強してくるなとは言いませんが、気軽に早い段階で一度相談してもらえるとよかもしれませんね。
ー建築に限らず、価格とか性能って比較してしまいますよね。
本当はメニュー表みたいに、価格が書いてある方がよいですよね(笑)。どんな順序で進めていくのかとかも含めて。
ーどのようなステップで進んでいくのかがWEBサイトに書かれているのは優しいかもしれないですね(笑)「気軽に早い段階で相談してほしい」と言ってましたが、具体的にはどの段階で相談してもらいたいですか?
もちろん私たちだけではなく、他の方の話も聞いて比較したいという段階でも大丈夫です。そういった方には、住宅の場合は最初にお話を聞いてから提案するまでの初回提案料金として10万円かかることをお伝えしています。
ーたしかに、3,000~4,000万で家を建てるとして、10万円で2~3箇所に提案してもらうのはアリですね。
そうですね。ただ、ハウスメーカーと比較していたり、私が新聞に寄稿している文章を見て問い合わせいただく方などは、初回提案の金額をお伝えするとすぐ断られるという経験もありますが……。
ー複数の建築家に相談することはよくあることですか?
はい、一定期間1人の建築士に相談していて、なにか気に入らなかったのか徐々にフェードアウトしてうちに来られた方もいらっしゃいますね。
ー三木さんは依頼してきた方から何を聞き出したいですか?
「どのような暮らしを思い描いているか」を聞きたいです。ただ聞き方が漠然としているとうまく答えを引き出せないので、「普段何してる時が幸せですか?」などと聞くことが多いです。雑誌のイメージを持って来られたときも参考にします。その雑誌のイメージの中から、実際は何を求めているのかを読み解いていく感じです。今の時代、インスタやピンタレストなどで簡単にイメージを集められるので、その中から私が分析していくことも仕事なのかなと思っています。
ー分析したものは当たるものですか?
「私の深層心理はそうだったの……!?」みたいなことはあまりないですが(笑)。たくさんのイメージを共有さえしていたら、大幅にハズレることはないですね。イメージは一つに絞るより、たくさんあった方が嬉しいです。
エネルギー効率よく、環境負荷を減らしながら小さく暮らす。
ー今は北海道で受注することが多いと思いますが、気候に合わせた設計が必要ですよね。どのようなことを意識していますか?
今私たちの仕事は、9割が札幌近郊ですね。断熱を駆使してエネルギーを効率よく使うことは当たり前だと思っていて、お客さんには小さく暮らすように勧めています。エネルギーコストがもっと高くなっていくこれからの時代を考えて、減築を勧めることもあります。小さい家はランニングコストやランニングエネルギー的に効率が良く、大きな家はいいことばかりじゃないのです。ただ、近年薪ストーブを望んで、小さく建てたいと考える方が多く、「広くしたい!」とか「薪で大丈夫なのか?」といった言い合いは少ないですね。
ー三木さん自身、暖房が薪ストーブのみの家に住んでいるので説得力があります。なぜ薪ストーブにしようと思ったのですか?
化石燃料や電気に頼りたくなかったからです。災害時や、長い目で見た時の化石燃料への不安は消えないですし、薪ストーブは環境に優しいです。住む人の暮らし方によっては難しいかもしれないんですが、例えば日中家に誰もいない場合は薪ストーブのみだと難しいのでペレットストーブも使ってみたり。私も以前は使っていました。
ー自分たちの家や事務所で実践しているということですね。
そうなんですが、調達が毎年間に合っていなくて真冬に薪が足りなくなったりしています……(笑)。
ーそれは大変ですね(笑)。環境に対する気持ちはどこで芽生えたのですか?
東京から私の出身である札幌に戻ってきて、盤渓の家ができるまでは祖母の家に住んでいました。そこで灯油を湯水のように使う床暖房、パネルヒーターで、灯油代に何十万もかかっていることに気がつきました。床暖が壊れたのをきっかけに、色々と調べて最初はペレットストーブを選びました。そこから設備や断熱、暖房について考えるようになりましたね。建築に携わる人の感覚は麻痺しがちなんです。近年の気候変動も著しいですよね。その原因として挙げられてる建築が占める割合を見ると、責任を感じてしまいます。自分たちがこの問題に気付くのも遅かったのではないかと思っています。
ー快適さを追求した結果が今の現状ですよね。
そうですね。灯油が永遠に存在すると思われていた時代があったからだと思っています。そういった築30〜40年の空き家を今使いたくても、設備仕様を変えないと使えないんです。
住宅も公共施設も、地産地消の技術を使う。
ー三木佐藤アーキはリノベーションの印象が強くありますね。
最近はリノベーションと新築で半々くらいですね。それぞれ面白さが違います。リノベーションはもともとの形ありきで、もとの良さを活かしていくところが面白い。新築は0からスタートなので、模型をこねくり回すような面白さがあります。どちらもやっていきたいですね。
ー住宅ではなく、商業施設や公共施設を作るとなると環境負荷がかなり高い気がするのですが、どのように取り組んでいますか?
公共・商業施設になると私たちが着手する時点で「地元の素材を使ってほしい」「補助金を使いたい」など条件が決まっていることが多く、環境のことを考える隙もないような感覚です。その中でも住宅と地続きの、小さい商業施設などもあったりしますが。
ーそういった自分の中で矛盾するようなこととはどのように折り合いをつけてますか?
今までで一番大きかった仕事が福井県勝山市の公共温泉で、建て替えではなく既存施設のリニューアルでした。その時は設備関係に私たちが口出す余地がなかったので、技術を地産地消することを考えました。地域の歴史を遡ってみると勝山市は繊維の街だったので、オリジナルの布を使ってソファーを作ったり、積極的に地元材を使ったり、地元で面白い施工会社を見つけたり。地産地消というのは住宅も公共・商業施設も一緒なんだなと感じました。
ーそういった部分は建築業界の中では評価されなさそう。業界からの見え方を意識することはありますか?
私自身、建築業界にずっぽりというわけではなく、少し出入りしてるくらいの距離感です。建築雑誌に載ったりするのは嬉しいし、何に面白さを感じるかといった点で合致することが多いですが、 建築雑誌に載るために建築士をやっているわけでは無いですね。
ー2人の役割分担は?
仕事があれば2人で取り組み、良い案が出た方の意見に傾いていきます。得意不得意があるので分担したりもしていますね。私たちの中では役割がありますが、外から見るとあまり分からないものかもしれません。始めは2人で担当して、終盤に差し掛かると1人になっているケースがほとんどです(笑)。結果的に2人でいることは、1人で取り組むよりも客観性が生まれたり、できることが多くなっている気がしてます。
ー子どもが生まれてから何か変わりましたか?
細かい作業があまりできなくなってしまって、打ち合わせの時に大枠の意見を述べたりすることしかできなくなってしまいました。ただ、独身時代は気にならなかったけど子どもにとっては危ない仕様とか、予期せぬ場所で遊ぶ姿を毎日見てると、建築家の側面での新しい発見がたくさんありますね。
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佐藤圭 - INTERVIEW
取材日:2023年5月19日